ファラーは一冊の本を見つけた

一冊の本でナポレオンを討つ!?

はい、みなさんこんばんは。

今回は『アラビアの夜の種族』を紹介したいと思います。
いやー、今回はなかなかストーリーがぶっ飛んでて、だいたいこんな話だよ、って紹介すると「え、なんかすごいね……」と驚かれます。

ではまず、あらすじから。

あらすじ

聖還暦一ニ一三年、繁栄を謳歌する都市カイロ。魅惑的なイスラムの世界に、ナポレオンの艦隊が攻め入ろうとしていた。

カイロの武将は筋肉隆々にて美麗、身に付ける宝石は荘厳、死をも恐れぬ無敵の戦士団であった。しかし、彼らが活躍できた時代も、今は昔。ナポレオンと衝突すれば、ただ蜂の巣にされるばかりだろう。

負けるはずがない!と戦に鼻息荒くする将軍らの中に、ただ一人ナポレオンについて知るのは、イスマイール・ベイ。彼にはズバ抜けて優秀な一人の奴隷がいた。それがこの物語の主人公アイユーブである。ナポレオンの詳細も、このアイユーブが仕入れた情報だった。

ナポレオンを討てば、イスマイール・ベイの出世は確実だろう。アイユーブは、その明晰な頭脳でもって、とんでもない奇策を思いつく。

それは、闇の歴史に名を残すという”災厄の書“をナポレオンに献上することで、内側から堕落させるというもの。当然、フランス語版など存在しないので、急ぎこれを翻訳して渡すという作戦だった。

災厄の書は間に合うのか、ナポレオンに届くのか。カイロが夜に沈む時、夜の種族が物語を語る。

読んだら絶対に死ぬ本

どこかの記事で『アラビアの夜の種族』が紹介されていて、おおこれは面白そうだ、と即購入。そして、冒頭だけ読んで忘却の彼方へ笑(←おい)。

自宅で埃を被っていた第一巻を引っ張り出し、辛抱して百ページくらい読んだら、もうそのあとはノンストップ。買ったのが昔すぎて、二巻以降も買っていたのに再度購入する始末。

アラビアの世界観が好きな方は、きっとすんなり没入できるでしょう。ただ、正直言うと、私は苦手で……。世界観や小説の文体に馴染むのに結構、時間がかかりました。

そういうことってありますよね?

エドウッドには真似できない入子構造

本作は入子構造と呼ばれるプロットの構成になっており、アイユーブ達の話(現代)と、災厄の書に登場する主人公らの物語(昔話)が、交互に織り成されています。

エドウッド(映画監督)もデビュー作『グレンとグレンダ』で、同様のことを試みたようですが、こちらは支離滅裂笑です(賛辞)。

さて、災厄の書には三人の主人公が登場します。

災厄の書〜三人の主人公〜

一、アーダム
千年前の時代に生まれた稀代の魔術師。王族の出でありながら、もって生まれた顔の醜さによって疎んじられ、歪んだ性格に育つ。魔術と計略でもって時代の覇者となる。

二、ファラー
アーダムより千年後に生まれた稀代の魔術師。黒人の両親から生まれながらも、全身が白いアルビノで、それ故に白人の住む森に捨てられて育つ。色々あって都会に出る。

三、サフィアーン
ファラーと同時代に生まれた稀代の剣豪。生まれは王子でありながらも、まだ腹の中にいた時分に宮殿を追われ、盗賊の息子として育つ。なんやかんやで先王(父)の霊剣を手に入れ、従姉妹の姫に恋をする。

この三人の主人公達が、はじめは別々の独立した物語として語られ、終盤になると交差します。それにしてもみんな生まれからして普通じゃない笑。ファラーだけは王族じゃないけれど、美麗であることをこれでもかと描写されていますし。

アーダムは王族でありながら、馬鹿にされ放っておかれて育つので、一番共感できるかもしれませんね(後に暴虐の限りを尽くす)。

サフィアーンに関してはもう、脳内で映画『バーフバリ』のテーマ曲”Saahore Baahubali”が流れっぱなしですよ。だって、非の打ちどころのない王が、兄弟の謀叛によって死に、息子だけはなんとしても逃す。そして、貧しくも心優しい人達に拾われ、なぜか(血筋か?)屈強な肉体を持つ男に育つ。ってこれもう、ほぼ『バーフバリ』!

まあ、”王子が城を追われて貧しい家で育つが、生まれが並々でないので、みるみる頭角を現す“という題材は、昔話の典型の一つ。長く続いてきた大きな伝統ではありますが(王を讃えよ!)

もうやめてイスマイールのLIFEは0よ!

そんなこんなで、ナポレオンが進軍して来る中、屋敷に篭って物語に夢中になる大の大人達。アイユーブの主人であるイスマイール・ベイも当然、気が気じゃないわけです。

「本当に大丈夫なのか?」

「もちろん信用はしているが……」

と、よせばいいのに、頑張ってフラグを立てまくる。ペンは剣よりも強しと言いますが、果たしてどうなるのか。

ぜひ読んでみてください(回し者)。

あ、ごめんこれ災厄の書だったわ。

ネタバレあり考察

『アラビアの夜の種族』はどうも翻訳物らしく、原作との出会いが巻末で描かれています(原作は『The Arabian Nightbreeds』)。そうなると、どこまでが翻訳で、どの部分が創作なのかが気になるところです。あくまで予想ですが、三人の主人公が登場する災厄の書の内容が原作で、アイユーブ達とナポレオンの下りは、作者の創作のような気がします。そういう印象を受けました。

個人的には挿入されたアーダムら三人の物語が好きなんですが、アイユーブについてはもっと掘り下げて欲しかったですね。やっとキャラが立ってきたあたりで終わってしまうので。

彼は思っていた以上に可愛そうなやつなんですよ。作中でも、途中までは超優秀イケメン執事みたいな役割を完璧にこなしていて、全く感情移入できないんですけど、最後の数ページで、本当に魂が持って行かれる。

もっと活躍が見たかった……。

おわりに

はい、というわけで『アラビアの夜の種族』を紹介させていただきました。いやー、分厚い三冊も面白ければあっという間ですね。

個人的にはアラビアンナイトの世界ってどうも苦手で、文化が遠いからイメージするの大変なんですよね。

例えば、サフィアーンが従姉妹の姫に恋をするのって、現代の日本で考えたら近親相姦じゃないの?って思うわけです(法的には大丈夫らしい)。ところが、王子と従姉妹の結婚はごく自然なことらしく、むしろ王子の正当な権利なんだとか(作中で説明あり)。

そもそも衣食住がイメージし難いですしね。

なので、本作を一読する前に、ディズニーのアラジンとか観ておくと、いいかもしれません。

というわけで、次からはまた映画の紹介に戻ります。
とっておきのネタを仕入れたのでお楽しみに。ではまた!

著者
こねこ座

こねこ座

映像作家。個人でアニメーションを制作する傍ら、ご機嫌な映画紹介ブログの管理人をしている。

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