娘がなかなか助けにこないシリーズ

下書きの線残すの逆に手間

はいみなさん、こんばんは。今回は『ウルフ・ウォーカー』を紹介したいと思います。

製作は、『ブレッド・ウィナー』や、『ソング・オブ・ザ・シー』で有名な、カートゥーン・サルーン・スタジオ。いま一番注目されているアニメーションスタジオと言って、間違いないでしょう。

そして今作の『ウルフウォーカー』。はっきり言って、かなり良かったです。手描きの質感を残す表現が、イキイキとした作画に合っています。このご時世、みんなデジタルで描いてますから、手描きの質感やラフの線を残すのは、普通にクリーンナップした絵を動かすより手間がかかります。

昔『かぐや姫の物語』の予告編で観た、かぐや姫が貝合わせをへし折り、走り出す場面を思い出しました。あの作画はもう、控えめに言って神なのですが、あの時のガサガサした質感が、遠く離れたカートゥーン・サルーンにしっかりと継承されている気がしました。

こんなにすごいのに、日本ではあまりヒットしていないのが口惜しい。『羅小黒戦記』みたいに、水面下で人気が出たらいいのですが……。

動物が人間に変身すればヒットする

あらすじ

イギリスから引っ越して来た少女ロビンは、ハンターの父を誇りに思い、自身もハンターを目指していた。なんとかして認められようと内緒で父の後をつけ、狼の森へ向かう。ところが、いざ狼に出会うと、恐怖と焦りで矢を当てられない。観念した時、野生児の少女があらわれ、狼を下がらせた。そして彼女は、傷ついた鷹(ロビンのペット)を抱えて、森の奥へと消えてしまうのだった。

また動物が人間に化けた

前回紹介しました『羅小黒戦記』では、妖精たちが本当の姿を隠し、人間のフリをして生活しています。

『ウルフウォーカー』もまた、動物が人間に化けます。もしくは、人間が動物に化ける。正直「またかよ」と思わなくもないです。ただ、姿や形を変えるのはアニメーションの得意技です。そこがしっかり描けているなら、なにも問題ないでしょう。むしろ大金星。

(動物が変身すれば儲かるのか……)。

それはさておき、『ウルフウォーカー』に登場する野生児メーヴは、全く人の話を聞かない点を除けば、対人コミュニケーションに問題はなさそうです。というかこの作品、人の話を聞かない人ばかり出てきます。

ロビンのお父さんは娘の話を頑なに聞きませんし、メーヴは頭が固く思想が過激派。護国卿は敬虔なキリシタンで、やはり過激派。そんな人達に囲まれたロビンは、可哀想にいつも目に涙をいっぱい溜めています。

メーヴのお母さんも聞く耳がありますね。まあ、狼が鋭いのは鼻なんですけど。

狼と人間の関係

狼に育てられた少女

狼に育てられた少女と聞くと、学生の頃に本で読んだ、アマラとカマラの話が思い出されます。幼少期に狼に育てられた姉妹が、10歳くらいの時に保護され、人間の暮らしに戻るのですが、とうとう適応できずに死んでしまう、という話です。

幼少期の教育がその後の人生に大きく影響するという、かなり極端な事例に、当時は戦慄しました。

人狼伝説

先程例に挙げたアマラとカマラは、どちらかと言えば『もののけ姫』に影響を与えているような気がします。おそらく『ウルフウォーカー』の根底にあるのは、人狼伝説です。

人狼伝説とは、人間の姿に化けた怪物が、普段は村人のフリをして生活しながら、隙があれば村人を襲う、よくある昔話の系譜です。

古の人狼伝説には、昼間は怪物で夜にだけ人間に戻る王子の話もありますが、現代の創作物だと、夜中に怪物になるケースが目立ちます。狼男は満月の夜に変身しますし、本作『ウルフウォーカー』も寝ている間に狼になる。

絵本みたいな絵柄で描かれているため、最初は「便利な能力手に入れた!」と思います。ところが、やがてこれは呪いだと気がつくわけです。自分ではどうにもコントロールできないのですから。ずっと寝ないでいるわけにはいきませんので、否が応でも人間社会から決別しなくてはならない。

人狼ゲーム

現在だと、人狼ゲームというジャンルが、漫画やゲームなどに描かれており、親しみがあるかもしれませんね。

人狼ゲームは複数人で遊ぶ(デス)ゲームで、村人や占師、狂人などの役割が与えられます。村人らは早く人狼が誰か当てて追放しないと、次々に殺されます。一方、人狼役の人は言葉巧みに場を掻き乱し、自分が人狼であることを隠しつつ、邪魔な村人や占師を追放するように仕向けます。

言うなれば、現代版人狼は知能犯、詐欺師です。そういう意味では、『もののけ姫』のサンや『ウルフウォーカー』のメーヴには、絶対できないゲームと言えます。

メーヴ「われはウルフウォーカー!」
サン「黙れ、私は山犬だ!」

人狼がカミングアウトするなんて、前代未聞すぎるわ笑。

おわりに

はい、というわけで『ウルフウォーカー』の紹介でした。

今回の記事では、あまり触れませんでしたが、本当に美術が素晴らしいアニメーション映画でした。僕も負けていられません。

カートゥーンサルーンのアニメーション作品は、東京だと恵比寿ガーデンシネマで観ることが多かったのですが、この度休館になってしまいました。今後が心配です。

映画業界に幸あれ(お前誰やねん)。

それではまた次回お会いしましょう。

投稿者
こねこ座

こねこ座

映像作家。個人でアニメーションを制作する傍ら、ご機嫌な映画紹介ブログの管理人をしている。

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